【回想】#4 あの日の約束

12月の夜、大通りを行き交う車の流れを見ながら、僕らは公園のベンチに2人で座っていた。

「うちら開けたところが好きなのかもね」

「そうかもね」

目の前には大きな広場というのか、ランニングコースというのか、とにかくだだっ広い空間が広がっていた。その奥をたくさんの車のヘッドライトやテールライトの光が途切れることなくその道路の輪郭を照らし出していた。

確かに、僕らが好んで時間を潰す場所は開けたところが多い気がした。空港のデッキ、どこかの神社の境内、ここ。2人でいることが憚られる関係、でも、こういった開けた場所ならその関係の影も薄まる気がするから好きだったのかもしれない。

彼女が結婚してから、なかなか以前のように2人で電車に乗って帰ったり、帰り道に長いことベンチに座って会話をするみたいなイベントが出来なくなってしまったけど、それまでは毎週のようにしていた。

その時は、今みたいに、2人で能動的に「2人でいる未来」を作りにいくというよりは、もっと手前、お互い愛し合っているのがわかっていて、きっと自然な成り行きでいつかはなんとなく2人でいる未来が想像できる、これから先色々なことがお互いあるけど、この出会いは続いていくのかなといった感覚だったと思う(少なくとも僕はそうだった)。

ひとしきり、ベンチに腰掛けながらぼんやりとお互いの気持ちや仕事の話、昔の話をした。いつだって、彼女との会話は僕をひどく安心させた。そんなことにも無意識に彼女への好意と愛情を感じていたんだと思う。

「なんか、このまま2人でいられたらいいのにね」

「帰りたくないな」

「いつかはわかんないけど、なんとなく(彼女の名前)とはずっと一緒にいる気がしてる。結局最後は一緒にいるっていうか」

「私もそんな気がしてるんだよね」

そんな会話をしているうちに僕はこう思った。

”たとえ、環境が変わったり事情が変わったりして離れることになったとしても、彼女との関係が消えることがないようにしたい”

彼女を失いたくないとか、そういう感じよりはもっと深いところで、僕の未来に対して彼女の存在を試したくなったんだと思う。彼女が”その人”だと本能的にそう感じていたから。そう思った僕はこんな提案をした。


「僕らこれからどうなるかわからないけどさ、(彼女の名前)とはずっと一緒にいたいなって思ってる。だから、とりあえずさ、10年後、またここで会う約束しない?」

「10年あればきっといろんなことが起きるし、そもそもこの約束も忘れちゃうかもだけど、10年経って、ここで再会できたらそれはきっと本物だと思わない?」

「すごくいい提案だと思う。きっと覚えてると思うな私。」


そんな無邪気な約束を期待と不安まじりにしてみた。お互いなんだか恥ずかしい気持ちだったけど、約束した瞬間、これから先の10年がどんな形であれ2人の間に確約されたような気がした。

その後、ベンチに座りながら2人でタバコを吸った。

吐き出した煙はタバコの煙なのか冬の寒さで白くなった吐息なのかわからなかった。

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