彼とは帰り道が一緒だった。
正確には彼はさみしがり屋なので私と帰るときは合わせていたんだと思う。お互いに仕事がハードでよく残業していた。2人で残業することもあったし、他のメンバーがいることもあったが帰り道にタバコを吸って、電車で帰るというのがルーティン化されていた。
そんなある日のことだった。
もう思い出せないが、おそらく2人とも会社で嫌なことがあったような気がする。帰り道の乗り換え駅で彼が「飲んで帰ろう」と言った。断る理由はなく、2人で適当な飲み屋さんに入った。
唐揚げ専門店だったようで、いろんな種類の唐揚げがあったと思う。
20種類近くあるものの内食べたいものが2人とも3つほど揃っていた。そんなことが嬉しかった。
ただ会社の事やお互いのことを話してるだけなのに、時間があっという間にすぎたような気がする。
それから残業、タバコに”からあげやさん”がルーティンに加わった。
今日までの境遇や当時のパートナーとの関係など話せば話すほど私たちはよく似ていた。会社の同僚からあっという間にお互いがお互いにとっての”良き理解者”となったと思う。
その日はいつものルーティンと違う点が1つあった。飲んだ帰りに少し散歩することにして川沿いを散歩していた。彼はなんの脈絡もなく私に言った。
「手でも繋いでおく?」
彼らしい誘い文句だとも思ったし、彼の家族を思うと後ろめたい気持ちももちろんあった。それに手をつなごうなんて誘われたのは初めてだった。くすぐったいような気持ちと、恥ずかしさや多くの感情がそこに一緒くたに存在していた。でも8割くらいは舞い上がっていたと思う。好きな人からの誘いはなんだってやっぱりうれしい。
少し手をつないでコンビニまで歩いて、アイスを買った。酔い覚ましのアイスを選ぶ私はまるで子供みたいにはしゃいでいた。選んだアイスを彼が見て、大きく笑った。
「それじゃ手を繋げないよ」
その言葉も、あの時の笑顔も、今もはっきりと思い出せる。私の選んだアイスはPINOだったということも。

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